クラウドコストに関する問いは、一見シンプルに聞こえます。
- この顧客にかかっているコストはいくらか?
- この機能の運用コストはどれくらいか?
- 支出を押し上げているのはどのチーム・製品か?
小規模なうちは、概算ですぐに答えられます。しかしシステムが成長するにつれ、これらは組織内でもっとも答えにくい問いへと静かに変わっていきます。
データが足りないからではありません。現代のインフラの仕組みそのものが変わったからです。
コストとオーナーシップが素直に紐づかなくなった
初期段階の環境では、コストはたいていオーナーシップと一致します。サービスはチームに属し、データベースは製品を支え、環境は機能に対応します。
ところがインフラがスケールすると、この考え方は成り立たなくなります。
今日のシステムには、次のような特徴があります。
- チームや製品を横断して高度に共有されている
- 多数の利用者にサービスを提供するプラットフォーム層の上に構築されている
- 設計段階からマルチテナントを前提としている
コストはもはや単一のオーナーには属しません。利用パターン全体に分散しているのです。この段階になると、「誰の所有か?」を問うこと自体が的外れになります。
共有インフラが実際の消費を見えなくする
意味のあるクラウドコストの多くは、共有レイヤーに存在します。
- データパイプライン
- ストリーミング基盤
- データベース
- ネットワークおよびサービス間通信
- 多数のworkloadsを支えるプラットフォームサービス
これらのコンポーネントは、チーム・機能・顧客に1対1で対応することはほとんどありません。
むしろ、組織全体からの利用を偏った形で吸収します。特定のチームが他より圧倒的に多く消費していても、その偏りは見えづらいのです。
結果として、全体の支出額は見えていても、その中身は不透明なままになります。
スケールするとユニットエコノミクスがぼやける理由
コストを利用実態に直接紐づけられなくなると、ユニットエコノミクスは成立しなくなります。
チームは次のような課題に直面します。
- 顧客別・製品別のマージンを説明できない
- どの機能が利益を生んでいるかを把握できない
- 支出を正確に予測できない
- アーキテクチャや価格に関する意思決定を自信を持って下せない
Financeから見れば数字が合わず、Engineeringから見ればレポートに反映されない複雑さが残ります。
そのギャップを、誰もが感じているのです。
本質的な課題は可視性ではなく、配賦にある
問題は可視性ではなく、モデルそのものにあります。
クラウドの請求書はどの組織でも見ることができます。
破綻しているのは、クラウドリソースとビジネス側から投げかけられる問いとを結びつける「マッピング」の部分です。
単純なオーナーシップを示すだけなら、クラウドタグは有効です。しかしユニットレベルの問いが1対1で完結することは、ほとんどありません。
- 1人の顧客が多くのサービスを利用する。
- 1つのサービスが多くの顧客に使われる。
- 1つのプラットフォームチームが多くの製品を支える。
- 共有インフラやネットワークトラフィックは、特定のオーナーに「属する」ものではない。
どれほどタグ運用を徹底しても、この多対多の実態や、「顧客あたりのコスト」「機能あたりのコスト」「どのチームがどのチームを実質的に負担しているか」といった問いに答えるための配賦ロジックを、タグだけで表現することはできません。
スケールするとユニットエコノミクスがぼやけるのはこのためです。データはあるのに、コストモデルがシステムの実際の使われ方と噛み合っていない。だからこそ、私たちが提唱する「タグに頼らないFinOps」は、従来のアプローチと一線を画すのです。
先進チームは何が違うのか
大規模運用を行うチームは、コストのモデル化そのものを見直し始めています。
- トップダウンのオーナーシップではなく、ボトムアップの利用実態から捉える
- 孤立したリソースではなく、共有システムを起点に考える
- 推測ではなく、実際の消費データに基づく
この転換によって、複雑な環境でもユニットレベルのコストを再び説明可能にできます。
その実例は、こちらのケーススタディでご覧いただけます。Akamaiがタグに頼らずに、共有インフラ全体のユニットレベルのコストをどのように説明しているかを紹介しています。
ご自身の環境への適用イメージを掴みたい方は、こちらからデモをご予約ください